相続放棄を考えているときの遺品整理——先に業者へ頼んではいけない理由
故人に借金があるかもしれない、家族の負担を考えて相続放棄を検討したい——そんな状況で、先に部屋を片付けてしまうと相続放棄ができなくなるおそれがあります。 本ページは、裁判所が公表している相続放棄の手続情報(2026年9月22日確認)と、当サイトが実査した遺品整理業者17社の実情をあわせて、依頼の順番と確認事項を整理したものです。
結論——順番を間違えないことがすべて
- ・相続放棄の申述は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」(裁判所の案内・2026年9月22日確認)。この期間内に「放棄するか」を決める必要があります。
- ・民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めています(法定単純承認)。売却・持ち帰り・廃棄が処分と評価されれば、放棄が認められないおそれがあります。
- ・つまり「片付け → 相続放棄」の順番は危険。「財産と負債の確認 → 方針決定 → 片付け」が安全な順序です。
- ・放棄後も、放棄の時に現に占有している相続財産については保存義務(民法940条)が生じ得ます。「放棄=一切ノータッチでよい」ではありません。
- ・遺品整理業者は買取とセットが一般的です(当サイト実査17社中14社が古物商許可を公式掲載)。相続放棄の検討中は、この点が特にリスクになります。
裁判所が公表している相続放棄の手続(2026年9月22日確認)
| 選択肢 | 相続人は「単純承認」「相続放棄」「限定承認」の3つから選択できる。相続放棄・限定承認をするには家庭裁判所への申述が必要 |
|---|---|
| 申述期間 | 民法により、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内 |
| 申述先 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円分(申述人1人につき)+連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なる) |
| 申述人 | 相続人(未成年者・成年被後見人の場合は法定代理人が代理して申述。一定の場合は特別代理人の選任が必要) |
出典: 裁判所「相続の放棄の申述」(2026年9月22日確認)。手続の詳細・必要書類は裁判所の案内をご確認ください。
「やってはいけない」と「やってよい」の線引き
処分とみなされるおそれがある行為
- ブランド品・貴金属・時計・骨董など換価できる物の売却や買取依頼
- 年式の新しい家電・自動車・美術品などを自宅へ持ち帰る
- 故人の預貯金を引き出して使う、財布の現金を使う
- 価値のある家財をまとめて廃棄する
一般に問題になりにくいとされる行為
- 放置すれば腐敗する生鮮食品の処分
- 財産的価値がほとんどない物の廃棄
- 写真・手紙など換価性のない思い出の品の保管
- 何がどこにあったかの記録・写真撮影(処分ではなく現状把握)
注意したいのは、「価値がない」の判断が結果的に争われ得ることです。迷う物は動かさず、写真を撮って現状を残しておくのが最も安全です。 処分してよいかの個別判断は、必ず専門家にご確認ください。
当サイトの実査から——遺品整理は「買取とセット」が一般的
ここが、相続放棄を検討している人にとって見落としやすい実務上の落とし穴です。 当サイトが公式サイトを実査した遺品整理業者17社のうち14社で、古物商許可の掲載を確認できました(各社の実査日は各レビューに明記。最新分は2026年9月17日確認)。 古物商許可は中古品の売買に必要な許可であり、「整理しながら値のつく物は買い取る」形が業界の標準的なサービスであることを示しています。
買取自体は、通常の相続では費用を圧縮できる有力な手段です。実際、当サイトのレビューでも買取で費用を相殺する方針の業者や、品目別の参考買取価格を公表している業者があります。 しかし相続放棄を検討している局面では、その買取が「処分」と評価されるリスクを抱えます。
だから、依頼の入口で必ず伝えるべき一言
「相続放棄を検討中なので、買取・持ち出し・廃棄は一切せず、現状の記録と見積もりだけをお願いしたい」。 この条件を受けられるか、受けられないかで、その業者に今頼めるかどうかが決まります。曖昧なまま作業日を確定させないでください。
相続放棄を検討中に業者へ依頼する場合のチェックリスト
相続放棄の検討中であることを最初に伝える
作業内容の前提が変わります。伝えずに進めると、良かれと思った買取・処分が行われるおそれがあります。
作業内容を「記録と見積もりのみ」に限定できるか確認する
買取なし・持ち出しなし・廃棄なしを、見積書に書面で明記してもらえるかまで確認します。
財産目録の作成に使える記録を残してもらう
写真・品目リストがあると、財産と負債の把握や専門家への相談がスムーズになります。
作業の着手は方針が決まってからにする
3か月の申述期間の中で「確認→判断→片付け」の順に進めます。片付けを先に走らせないことが最大の防御です。
許可の状況もあわせて確認する
家庭の廃棄物の収集運搬には一般廃棄物収集運搬業の許可(または市町村の委託・許可業者への引き渡し)が必要です。詳しくは許可の見方をご覧ください。
よくある質問
相続放棄を考えています。遺品整理はいつしてもいいですか?
相続放棄をするかどうかが決まるまでは、財産価値のあるものに手をつけないのが安全です。民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めており(法定単純承認)、売却・持ち帰り・廃棄が「処分」と評価されると、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。判断に迷う場合は、作業前に弁護士等の専門家へ相談してください。当サイトは業者比較サイトであり、個別の法的判断はできません。
相続放棄の期限はいつまでですか?
裁判所の案内では、相続放棄の申述は「民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならない」と定められています(2026年9月22日確認)。申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所、費用は収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手です。遺品整理の日程は、この3か月をどう使うかとセットで考える必要があります。
腐ってしまう食品やゴミも片付けてはいけないのですか?
一般に、財産的価値がほとんどない物の廃棄や、放置すれば腐敗する生鮮食品の処分など、社会通念上必要かつ相当と評価される行為は法定単純承認に当たらないと説明されます。ただし「価値がない」の判断は個別の事情によります。ブランド品・貴金属・年式の新しい家電・自動車など、換価できる可能性のある物は、判断がつくまで動かさないのが安全です。
相続放棄をすれば、家の中の物は放っておいていいのですか?
いいえ。民法940条は、相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならないと定めています。放棄したから一切関係ない、とは限らないため、鍵や家財の扱いを含めて専門家に確認してください。
遺品整理業者に「買取なしで作業だけ」と頼めますか?
業者によります。当サイトが実査した17社のうち14社が公式サイトに古物商許可の掲載を確認できており(2026年9月17日までの各社実査時点)、遺品整理と買取をセットで提供するのが業界の一般的な形です。相続放棄を検討中であることを最初に伝え、(1)買取を行わないこと (2)処分・持ち出しをしないこと (3)何がどこにあったかを記録に残すこと——を依頼内容として受けられるか、見積もりの場で確認してください。
出典・確認日
- 裁判所「相続の放棄の申述」(申述期間・申述先・費用・申述人)——2026年9月22日確認
- 民法921条(法定単純承認)、民法940条(相続の放棄をした者による管理)——条文の内容は要約して紹介しています
- 遺品整理業者17社の古物商許可の掲載状況——当サイトの各社公式サイト実査(実査日は各レビューページに明記)
制度・運用は改正されることがあります。実際の判断は、必ず最新の公的情報と専門家の助言に基づいて行ってください。